疲労限度っていうのが急に出てきたんだけど、なんで疲れてんの?
材料力学での疲労は、体力的なものではないんだけど、非常に大切な考え方だから解説するね。
本日は疲労限度について解説します。
疲労限度を解説する上で必須となる知識、SN曲線についても解説しますので、
本記事を読めば、実際の部材が壊れないようにするにはどうすればよいか、理解が深まります。
応力やひずみについて、理解ができていない方は、下記の過去記事を参考にしていただければと思います。また動画でも解説していますので、是非参考にしていただければと思います。
応力 ひずみ曲線の復習
疲労限度を理解する上で、応力ひずみ曲線を思い出す必要があります。
過去に解説した記事がありますので、詳細はぜひそちらを参考にしていただければと思います。
応力 ひずみ曲線とは、 その部材の材質が、どの程度の応力を与えたら壊れるかを示すグラフでしたね。
この『壊れる』の定義はしっかりと決めておく必要があるのですが、
例えば破断した場合を『壊れる』とするのであれば、応力やひずみを下図の青の点線枠に入らないように抑える必要があるわけです。
一方、塑性変形した場合を『壊れる』と決めた場合は、下図の弾性限度を超えないように、構造を決める必要があるわけですね。
このように、『壊れる』状態をどのように定義するかによって、許容される応力やひずみの量が決まってきます。
疲労限度について
それでは『疲労限度』とは何か?
これは 何回かの繰り返し応力を受けた場合壊れる限界点を示しています。
わかりやすくいうと、これまで一撃で壊れる点はどこかという議論をしていましたが、
100回、あるいは1000回叩いたときに壊れるのは応力ひずみ曲線のどこなの?という話です。
当然、繰り返し応力が発生する場合の方が、許容される応力や歪み量は小さくなるので、
下図のようなイメージになります。
弾性限度よりさらに応力が小さいエリアに疲労限度がきていますね。
疲労限度とS-N曲線
疲労限度が具体的にどのように決まるのかについて解説します。
この疲労限度を求めるには、下図のような『S-N曲線』を描く必要があります。
S-N曲線とは、とある応力を繰り返し与えた時、何回で壊れるかをプロットしたときに得られるグラフです。
この時、一般的には『破断=壊れる』とすることが多いです。
上図は例として、鉄鋼のような金属としていますが、 非金属の場合など材質が変わると、曲線の形状が変わることに注意しましょう。
さて、このS-N曲線で注目していただきたいのは、 横軸の繰り返し回数が増えても、応力が一定のラインとなっている部分です。
つまり、この一定ラインの応力を超えると、繰り返し荷重を与えるといずれ壊れてしまう、ということになります。
逆にこの応力以下にすれば、繰り返し荷重を与えても壊れない、ということになりますね。
このときの 一定ラインの応力を疲労限度と読んでいます。
疲労限度の大きさと引張強度には強い相関があることがわかっており、疲労限度は引張強度の半分の大きさくらいになります。
疲労限度がない材質もある?
今回、取り扱ったのは鉄鋼のような材料でしたが、 アルミニウムなどの金属やプラスチックのような樹脂系の材料だと、疲労限度が現れません。
イメージとしては下図の緑線のような形になります。
また、鉄鋼のような材料でも、高温状態であったり、酸性雰囲気のような腐食が発生する環境であれば、疲労限度は発生しなくなります。
この場合の疲労限度の決め方は、実際に使用する期間や回数などを想定して、疲労限度を設定することもあるようです。
まとめ
疲労限度とS-N曲線について解説しました。
応力-ひずみ曲線の弾性限度よりさらに応力の低いエリアに疲労限度というものがあります。
これは繰り返し荷重によって壊れる限界点であり、S-N曲線から求めることができるのでした。
しかし、このS-N曲線も材料や測定雰囲気によって、疲労限度が現れないこともありますので、
その場合はケースバイケースで適切な疲労限度を設定する必要があります。
このあたりの強度設計は製品の信頼性に大きく関わる部分です。
日本の安心安全の技術の根幹とも言える分野ですので、実務で使う方はしっかりと勉強しておきましょう。
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