

本記事では、振動工学でどのようなことを勉強するかについて、全体像がわかるように解説します。
- 振動工学の全体像を知りたい人
- 物理を勉強していて興味がある人、仕事で振動の知識を使う人
振動工学を勉強する目的
そもそも、振動工学を勉強する目的ですが、ざっくりまとめると下記になります。
- 実際のモノがどのように振動するか
- 実際のモノが振動がどのように伝わるか
- 振動の数学的な取り扱い方
上記を理解することで、 構造物の振動を制御 する
最終的にはモノの振動を制御するための設計をどうするか、これができるようにするための学問です。
具体例としては、建物とか橋とかに振動が加わると壊れちゃいますね。
これを抑えるために、どんな構造にしたらいいのかな~と、考えるのに必要なのが振動工学です。
逆に揺らしたい構造にする場合もあります。
振動から発電する振動発電などは、できるだけ揺れる構造にして、発電量をUpさせます。
マッサージ器とかも、できるだけ少ないエネルギーで振動できるような構造設計になっています。
このように、 自由自在に振動を制御できるようになるために、振動工学が必要なのです。
振動工学の全体像
概要
もう少し具体的にどのような内容を勉強するかについてまとめます。
- 1自由度系の振動(質点が1つ)
- 2自由度系の振動(質点が2つ)
- 多自由度系の振動(質点がたくさん)
- 連続体の振動(点ではなく線や面)
- 非線形の振動(非線形と呼ばれる力が入った場合)
教科書の目次みたいになってしまっていますが、ご容赦ください。
振動のパターン
それぞれの項目で共通して学習する内容として、下記のような振動状態の種類があります。
- 減衰があるか、無いか
- 外力があるか、無いか
- 外力がある場合、物体を直接揺らしているか(強制振動)、土台を揺らしているか(変位振動)
これらのモデルと運動方程式を表にまとめました。

これは1自由度の線形振動の場合で、2自由度系であっても、多自由度系であっても、非線形であっても同じです。
単振動が一番簡単で、減衰ありで外力が加わると、複雑な計算が必要になります。
過去の記事でそれぞれを解説していますので、参考にしてくださいね。
1自由度の線形振動 | 減衰無し | 減衰あり | |
外力無し | 振動・波動の基礎①-古典的な調和振動子(単振動) | 振動・波動の基礎②-振動の減衰 | |
外力有り | 強制振動 | ||
変位振動 | 割愛 | 振動・波動の基礎 ④変位加振・地動加振 |
さて、これらは全て1自由度、つまり質点が1つだけ、という状態です。
質点を増やしていくと、実際のモノの状態に近づいていくのですが、増やすとどうなるのか・・・?
下図のようなイメージですね。

2自由度、多自由度、連続体と実物に近づけると、どうなるか解説した記事は下記となります。
基本的には1自由度系と考え方は同じですが、自由度が増えることで、振動の固有モードというものを考える必要がでてきます。
この 固有モードの考え方は超重要です。
最後に、これまで線形の力が働くような系を考えていましたが、世の中には非線形の力というものが多く存在します。
非線形の力とは、 変位の1次に比例しない力、を指します。
つまり$y=ax$のような1次関数で表現できない力のことになります。
両端固定の梁だったり、ブランコだったり、雲のうずまきだったり・・・
この非線形の力を考えると、より複雑でリアルな現象を理解できます。
非線形については、基礎的な内容を過去の記事でまとめています。
これらについては今後、詳細をわかりやすく記事にしていきます。
まとめ
振動工学の基礎的な部分の概要を解説しました。
まずは、単純な1自由度の振動からスタートします。
その中でも減衰のないものを単振動と呼びます。
振動のパターンですが、減衰項の有無、外力を付け加える、もしくは土台を揺らすようなパターンがあります。
基本的には1自由度系の考え方が多自由度系の振動でも応用できますが、固有モードの考え方など、多自由度系ならではのものを理解する必要があります。
そして、非線形の力を考えることで、さらに振動工学の応用範囲は広がります。
これらを学んでいくことで、立派な振動の専門家になれますので、私といっしょにがんばっていきましょう!
参考文献
- 振動工学の基礎:岩壺卓三、松久寛、森北出版株式会社
- 機械力学-振動の基礎から制御まで:日高照晃、小田哲、川辺尚志、曽我部雄次、吉田和信、朝倉書店
- 構造と連続体の力学基礎:熊でもわかる変形できる物体の力学:岩熊哲夫、小山茂 web版
振動工学の基礎の本です。わかりやすく解説されていますので、参考にしていただければと思います。
また、非線形についての参考文献です。初心者~中級者向けです。