強制振動における共振の計算について詳細を示します。
本記事では減衰項ありで計算します。
- 減衰が入った共振の運動方程式が解けない人
- 仕事で構造物の設計をする人、大学で振動の研究をしはじめた人
強制振動の共振と、減衰が無い場合については下記の過去記事を参考にしてください。
減衰が無い場合と同じく、微分方程式を解く必要があります。
式も少し複雑ですが、できるだけ簡潔にわかりやすく解決します。
減衰のある振動の運動方程式を解く
減衰のある自由振動の運動方程式
強制振動の話をする前に、質量に周期的な外力が無い場合を考えます。
詳細は下記の記事で解説していますので、まず外力が無い場合を理解してから読んでください。
減衰のある振動は、下記のようなモデルで表すことができます。

減衰は速度に比例する粘性減衰を仮定しています。
この運動方程式は下記のようになります。
これが『減衰のある自由振動の運動方程式』です。
減衰のある強制振動の運動方程式
では、強制的に振動するように、質量の部分に周期的な外力を付け加えてみましょう。
角振動数ωで周期的に変化する外力を、$Fcosωt$としますと、
となります。右辺に$Fcosωt$がくっつきました。
整理するために、両辺をmで割ると
ここで、$ζ$、$ω_0$、$f$の3つのパラメータを下のように定義します。
ζは減衰比、$ω_0$は固有振動数を示します。
これらを使って運動方程式を書き換えると、下記のようになります。
教科書とかでもよく出てくる形ですね。
$ζω_0 = γ$としている参考書などもありますが、本質的には同じです。
微分方程式を解く
ここから運動方程式を解いて、一般解を求めていきます。
解き方ですが、この微分方程式の解は
同次方程式の一般解 + 1つの特解
となります。同次方程式の一般解というのは、外力が無い場合の一般解です。
同次方程式の一般解
下記の記事で詳細を計算していますので、結果だけお見せします。
一般解は、下記です。
減衰比ζの値で場合分けしてグラフを書きます。

ζが1より小さいときにはじめて振動します。
ここで大事なのは、 ζの値に関わらず、この一般解はt→∞で0に収束する、ということです。
同次方程式の一般解としては上記を理解しておけば大丈夫です。
特解を求める
それでは特解を仮定します。
$x=Acosωt + Bsinωt$と特解を仮定すると、微分したものは下記のようになります。
これらを運動方程式に代入します。
見通し良くするためにcosとsinの項で分けます。
ここで、cos、sinの係数がそれぞれゼロになるようにして、AとBを求めます。
となります。AとBを求めたいので、これらの式をAとBで整理すると
この連立方程式を解けばよいので、解きましょう、つべこべ言わずに笑
Bを消去するためにBの係数で①式、②式の両辺をそれぞれ割ります。
①’-②’より
左辺を通分して、
Aの係数で両辺を割ってAを求めると
このAを今度は②’式に入れて、Bを求めます。
整理すると
これでAとBが求まりました。
$x=Acosωt + Bsinωt$と特解を仮定していましたので、ここに代入します。
分母と分子の$f$がcosとsinの項で共通なので、かっこでくくります。
さて、ここからさらに変形するのですが、三角関数の以下の公式は覚えていますか?
この公式を使います。
xの式を整理しますと、
このようになります。三角関数がsin一つだけになりましたね。
これで特解が求まりました。
一般解から振動の様子を見る
この微分方程式の解は
同次方程式の一般解 + 1つの特解
となります。下記に同次方程式の一般解を示します。
特解は先ほど求めましたね。
③と④を足し合わせたものが解になりますね。
というわけで一般解が求まりました。
ここから振動の様子を見ていきます。
t→∞としたとき、⑤はどうなるか?についてです。
最初の2項の指数関数の部分は、外力が無い場合の減衰振動を示していますので、t→∞とすると、0に収束します。
つまり、 十分ば時間が経つと特解の部分だけが残り、sinの項で振動するわけですね。
sinの係数が振幅になりますので、Xと置きますと、
この振幅が角振動数ωによってどのように変化するかを見ていきます。
上式の分母が最小値になるωがピークの値になりますので、このときのωを求めます。
分母のルートの中身だけ取り出して整理しましょう。$ω_0^4$でくくります。
最小値となるωを議論したいので、係数の$ω_0^4$は無視できます。
さらに$\frac{ω^2}{ω_0^2} = Ω$と置きますと、
と整理できますので、Ωの2次方程式の最小値を求める問題になります。
このときの最小値を求めるために式変形しますと、
となります。よって$Ω=1-2ζ^2$が最小値となるΩです。$\frac{ω^2}{ω_0^2} = Ω$なので、
が最小値となるωになりますね。
このときのピーク値は、⑦式の定数項の部分を計算すると、
⑥式の分母のルートの中身が上式になるわけなので、
ピークの値を$X_{max}$とすると
$ζ$について分母にあるので、 $ζ$が小さいほどピークは鋭くなりますね。
ということで、共振状態の振幅と角振動数ωの関係は下図のように書けます。

簡単のために$ω_0=50$、$f=1$で計算しています。
ω=50の近くに共振ピークがありますが、実は少し低周波数側へピークシフトしています。
ピーク周波数は$ω = \sqrt{1-2ζ^2}ω_0$となるので、減衰の効果で低周波数側へシフトするのですね。
この式からわかるように、$ζ>\frac{1}{\sqrt{2}}$となると、解がなくなり、共振しなくなります。
計算結果から、ちゃんと共振のピークが導出できました。
まとめ
本記事では計算がメインなのでここで終わりです。
一度計算すると、理解が深まると思いますので、参考にして計算してみてください。
それではまた。
参考文献
- 振動工学の基礎:岩壺卓三、松久寛、森北出版株式会社
- 機械力学-振動の基礎から制御まで:日高照晃、小田哲、川辺尚志、曽我部雄次、吉田和信、朝倉書店
- 構造と連続体の力学基礎:熊でもわかる変形できる物体の力学:岩熊哲夫、小山茂 web版
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