

でも構造物が地震などで揺れる場合は少し変わってくるんだ。
これまで、繋がれた質量に、直接的に外力を与えて振動させる強制振動の解説をしてきました。
今回は、振動の変位加振(地動加振とも言います)について解説します。
- 強制振動と変位加振(地動加振)の違いを知りたい人
- 物理を勉強していて興味がある人、仕事で振動の知識を使う人
変位加振(地動加振)とは?
強制振動とのモデルの違い
変位加振は、繋がれた質点に間接的に力を加え、振動させたときの状態を指します。
モデルを見て比較してみましょう。

左側がこれまで扱ってきた強制振動のモデル、右側が変位振動のモデルです。
変位振動のモデルは固定部が揺れて、慣性力で質量を動かします。
このときの固定部の変位を$x_0$としています。
冒頭の地震の例で言うと、固定部が地面で、質量がビルなどの建物に相当しますね。
運動方程式を解く
さて、それでは違いを考えるにあたって、運動方程式を解くことは避けられません。
慣性力を考慮して、運動方程式は、
$ω_0 = \sqrt{\frac{k}{m}}、ζ =\frac{c}{mω_0}$とすると、
$x_0$の項を右辺に持ってくると、
固定部の振動を振幅Xとして、$x_0 = Xcosωt$とすると、$\dot{x_0} = -Xωsinωt$より、
三角関数の合成公式を使って、右辺を整理します。
これを使うと
$$tanδ =\frac{-2ζω_0ω}{ω_0^2} = -\frac{2ζω}{ω_0}$$
ここまで式変形をして、①と強制振動の運動方程式②と見比べます。
左辺が同じで、右辺が違うだけですね?
しかも微分方程式の左辺の形が同じで、右辺は三角関数なので、解となる関数の形は同じになります。
ということで、解き方については強制振動の運動方程式と同じになり、非斉次方程式を解くことになります。
強制振動の運動方程式を実際に過去記事で解いていますので、結果だけを引用します。
強制振動の運動方程式の一般解は下記です。
変位振動も強制振動も同じ三角関数で表すことができるので、振幅の部分に着目します。
①と②式において、右辺の三角関数の係数を比較して、
と③の式を置き換えると、変位振動での振幅が求まりますね。
振幅部分をAとすると
このXの係数部分を伝達関数と言い、$T_f$と示します。
伝達関数は、固定部の振動が質量部分にどのくらい伝わるか、を示した関数になり、
よって
$Ω = \frac{ω^2}{ω_0^2}$とすると、
この関数のグラフを書くと下記のようになります。

強制振動のときと同じような図になりますが、厳密には異なります。
イメージ的には、$ω_0$の近くで共振するが、減衰の分だけ低周波数側へ共振周波数はシフトします。
強制振動の変位グラフとの比較


それでは先ほどのグラフを少し表示を変えて、強制振動のときと並べて比較してみましょう。

縦軸は振動の応答倍率を対数表示、横軸は$\frac{ω}{ω_0}$で示しています。
応答倍率というのは、与えた力の振幅に対して、質量の振幅が何倍になるかを示しています。
右図のように、変位加振の場合、共振周波数より高い部分で減衰比ζによって値が変動します。
このことから、揺れにくくする構造にするための指針がたちます。
- $ω/ω_0$できるだけ大きくする
- 減衰比をζをできるだけ小さくする
減衰比を大きくすればさせるほど、振動はしにくくなります。
その一方で、広い周波数の領域で、加振させた振動の振幅のままになってしまいます。
逆に減衰比を下げると、共振周波数でものすごく共振してしまいます。
ただし共振周波数より高い領域ではほとんど振動しなくなる、という現象が起こるわけです。
そして、共振周波数を高くすると、共振周波数より低い領域では、加振させた振動の振幅で振動してしまいます。
どのような振動を想定するかで、どのような設計にするかは変わってきますが、上記のようなグラフのイメージを持っていれば、設計指針も立てやすくなるでしょう。
まとめ
今回は変位加振(地動加振)の場合について解説しました。
強制振動のときと大きくは異なりませんが、振動数が高い部分で減衰との関係が少し変わってきます。
この変位加振は、振動の伝達を記述しており、構造設計を行う上で避けては通れないものです。
イメージできるようになれば、応用が利きますので、是非、本記事で理解していただければと思います。
参考文献
参考文献
- 振動工学の基礎:岩壺卓三、松久寛、森北出版株式会社
- 機械力学-振動の基礎から制御まで:日高照晃、小田哲、川辺尚志、曽我部雄次、吉田和信、朝倉書店
- 構造と連続体の力学基礎:熊でもわかる変形できる物体の力学:岩熊哲夫、小山茂 web版
- 振動・波動:小形正男、裳華房