物理で行列出てきたんだけどのイメージが全然つかないです…
苦手君
デルタ先生
大学レベルでは行列は当たり前のように使う数学だから、今日は基礎をしっかりと理解できるように解説するね。
今回は行列の基礎として、行列×ベクトルの掛け算の意味を学習します。
大学で学ぶ数学の線形代数の1次変換(線形変換)とも呼びます。
行列は大学レベルの物理の世界では避けては通れない数学です。
例えば本サイトで取り扱っている振動分野では多自由度系の単元で多用されます。
下記が参考記事です。
まずはこの行列×ベクトルの意味を理解し、イメージを付けた状態で線形代数を学んでいきましょう。
下記動画でも解説していますので参考にしてください。
行列×ベクトルの掛け算
ベクトルの1次変換(線形変換)とも呼ばれる操作です。
まず2行2列の行列と2成分のベクトルの掛け算を考えてみましょう。
$$\left(\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right)\left(\begin{array}{c}e\\f\end{array}\right)$$
こういう掛け算です。
文字だとわかりにくいので、適当に数字を入れてみましょう。
$$\left(\begin{array}{cc}1&2\\3&4\end{array}\right)\left(\begin{array}{c}1\\2\end{array}\right)$$
この掛け算を計算してみると、
$$\left(\begin{array}{cc}1&2\\3&4\end{array}\right)\left(\begin{array}{c}1\\2\end{array}\right)=\left(\begin{array}{c}5\\11\end{array}\right)$$
このようになります。
ここで、行列Aとベクトル\(a\)、\(b\)を下記のように定義します。
$$A=\left(\begin{array}{cc}1&2\\3&4\end{array}\right)$$
$$\vec{a}=\left(\begin{array}{c}1\\2\end{array}\right)$$
$$\vec{b}=\left(\begin{array}{c}5\\11\end{array}\right)$$
このようにすると、もとの式は下記のように書けます。
$$A\vec{a}=\vec{b}$$
この式を見ると、『ベクトル\(\vec{a}\)は行列Aをかけることによって、ベクトル\(\vec{b}\)に変化した』ということを示していますね。
行列にはベクトルを異なるベクトルに変化させる性質がある、 ということを理解しておきましょう。 どういう形に変化させているか まず、一般的な形で解説します。
$$A=\left(\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right)$$
$$\vec{a}=\left(\begin{array}{c}x\\y\end{array}\right)$$
結論を述べますと、下記になります。
行列Aはベクトル\(\vec{a}\)を\(xy\)座標系(直交座標系)から、行列Aの列ベクトルが張る空間へ変化させている
なんのこっちゃ?と思われる方も多いと思いますので、解説していきますね。
行列Aの見方として、上記のように列ベクトルが二つ(\(\vec{x'},\vec{y'}\))並んでいる、という風に見てください。
後々こうなっているとわかりますので、まずはそういうものだと思ってくださいね。
それでは解説に移ります。
行列Aの中にある列ベクトルを\(\vec{x'}\)、\(\vec{y'}\)という風に定義します。
$$\vec{x'}=\left(\begin{array}{c}a\\c\end{array}\right)$$
$$\vec{y'}=\left(\begin{array}{c}b\\d\end{array}\right)$$
まず、ベクトル\(a\)について直交座標系の単位ベクトル\(\vec{e_x}\)、\(\vec{e_y}\)を用いて表すと、
$$\vec{a}=\left(\begin{array}{c}x\\y\end{array}\right)=x\left(\begin{array}{c}1\\0\end{array}\right)+y\left(\begin{array}{c}0\\1\end{array}\right)=x\vec{e_x}+y\vec{e_y}$$
$$\vec{e_x}=\left(\begin{array}{c}1\\0\end{array}\right),\vec{e_y}=\left(\begin{array}{c}0\\1\end{array}\right)$$
となります。
次に、ベクトル\(\vec{a}\)に行列Aをかけると、下記のように計算できます。
$$\begin{eqnarray}\left(\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right)\left(\begin{array}{c}x\\y\end{array}\right) &=&\left(\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right)(x\vec{e_x}+y\vec{e_y}) \\\\&=&x\left(\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right)\left(\begin{array}{c}1\\0\end{array}\right) +y\left(\begin{array}{cc}a&b\\c&d\end{array}\right)\left(\begin{array}{c}0\\1\end{array}\right) \\\\&=&x\left(\begin{array}{c}a\\c\end{array}\right)+y\left(\begin{array}{c}b\\d\end{array}\right)\end{eqnarray}$$
このように行列Aをかけることで、基底となる単位ベクトルの部分が変化していることがわかります。
つまり、座標軸が\(xy\)座標から、行列の列ベクトルによって示される座標系に変化したわけですね。
行列は列ベクトルで見ることが大事なわけです。
具体例で見てみる
$$\begin{eqnarray}\left(\begin{array}{cc}1&2\\3&4\end{array}\right)\left(\begin{array}{c}1\\2\end{array}\right) &=&\left(\begin{array}{c}5\\11\end{array}\right)\end{eqnarray}$$
この行列とベクトルの掛け算の計算はこのようになります。
先ほど行った計算結果のように、行列Aの列ベクトルを単位ベクトルとして書き直すと、下記のようになります。
$$\begin{eqnarray}\left(\begin{array}{c}5\\11\end{array}\right) =1\left(\begin{array}{c}1\\3\end{array}\right)+2\left(\begin{array}{c}2\\4\end{array}\right)\end{eqnarray}$$
このように書けるのですが、グラフで示した方がイメージがつきやすいと思いますので、グラフを見てみましょう。
直交座標から行列の列ベクトルで示される座標系に変換されていることがわかりますね。
私的なイメージですが、行列によって空間を捻じ曲げている感じです。
まとめ
今回は行列×ベクトルのイメージがわかるように解説しました。 このイメージが非常に大事ですので、自分でも1度は計算しながら理解して頂ければと思います。