振動・波動の複素解法_減衰無しの強制振動

大学物理 振動工学

振動・波動の複素解法 ②減衰無しの強制振動の運動方程式

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単振動では複素数を使うとややこしかったけど、強制振動を複素数で解くとメリットがあるの?

苦手君
デルタ先生

強制振動の場合はメリットがあると言えるね。今回は減衰無しのものを勉強しよう。

 今回は減衰無しの場合の強制振動について解説します。

複素数を使って解くことで、外力がsinの場合もcosの場合もあわせて解くことができるようになります。

1粒で2度おいしい感じです。

過去に複素数を用いて単振動の運動方程式を解いていますので参考にしてください。

振動・波動の複素解法 ①古典的な調和振動子の運動方程式

本記事をおススメする人

  • 複素数を使って減衰振動の運動方程式を解きたい
  • 物理を勉強していて興味がある人、仕事で振動の知識を使う人

本記事の内容は動画でも解説していますので参考にしてください。

強制振動のモデル

運動方程式

角振動数\(ω\)で周期的に変化する外力を、\(Fcosωt\)としますと、

$$m\ddot{x}+kx = Fcosωt・・・①$$
この運動方程式は2階非同次線形微分方程式で、この微分方程式を解くにあたって複素数を用います。

運動方程式の解き方

上図で示すように、2階非同次線形微分方程式の一般解の求め方は、同次方程式の一般解と非同次微分方程式の特殊解の和となります。

同次方程式の一般解は単振動の一般解となりますので、非同次微分方程式の特殊解を求めることになります。

特殊解を求める

指数関数を用いて特殊解を仮定するのが、微分方程式での解法のセオリーですが、

\(x=e^{λt}\)と仮定すると、少し複雑な形になって見通しが悪くなります。

仮に指数関数を用いたとしたら、左辺が指数関数の式、右辺が三角関数の式になってしまいますので、

指数関数と三角関数をつなげるために、オイラーの公式を使います。

オイラーの公式は下記です。

$$e^{iθ}=cosθ+isinθ$$

このオイラーの公式を使うために、周期的外力が\(Fcosωt\)の式と、\(Fsinωt\)に\(i\)をかけた式の和を取ります。

また便宜上、\(Fsinωt\)の式は\(x\)を\(y\)の式として書き直します。

すると下図のような運動方程式を得ることができます。

$$m\ddot{x}+kx+i(m\ddot{y}+ky)=F(cosωt+isinωt)$$

この式の実部と虚部を見てみると、実部が周期的外力が\(Fcosωt\)の運動方程式を示していて、虚部が\(Fsinωt\)を示しています。

この特殊解の構造は後で使いますのでしっかりと理解しておいてくださいね。

では運動方程式を整理して、特殊解を求めていきます。\(z=x+iy\)とおいて、運動方程式を書き直しますと、下記のように式整理できます。

$$m\ddot{z}+kz=Fe^{iωt}$$

この形の式を見て、特殊解を考えていきます。

指数関数を特殊解として仮定すると、運動方程式に代入すれば指数関数が消えてくれそうですね。

ということで特殊解を\(z=Ae^{iωt}\)とおいて、係数\(A\)を求めに行きます。

運動方程式に特殊解\(z=Ae^{iωt}\)を代入すると

$$-mω^2Ae^{iωt}+kAe^{iωt}=Fe^{iωt}$$

となります。

これを固有角振動数\(ω_0\)を用いて書き直し、両辺の指数関数を消去します。すると、

$$A(ω_0^2-ω^2)=\frac{F}{m}$$

となり、\(A\)の式にすると、下記のように\(A\)が求まります。

$$A=\frac{1}{ω_0^2-ω^2}\frac{F}{m}$$

特殊解の式に代入すると、下記のように求まります。

$$z=\frac{1}{ω_0^2-ω^2}\frac{F}{m}e^{iωt}$$

特殊解の実部と虚部の意味

特殊解が上図のように求まりましたので、解の意味を考えていきましょう。

上図のように、\(z\)は\(x+iy\)という形に書き換えることができます。

ここで、実部に注目すると、実部は周期的外力が\(Fcosωt\)の場合の特殊解を示しています。

虚部については周期的外力が\(Fsinωt\)の場合の特殊解を示しています。

なぜこのようになるのかについては、運動方程式の実部と虚部が、それぞれ周期的外力\(Fcosωt、Fsinωt\)の場合の運動方程式を示しているからなんですね。

強制振動の運動方程式で周期的外力が\(cos\)の場合は実部、\(sin\)の場合は虚部を採用すればよいということになります。

(図の場合は、周期的外力を\(sin\)で仮定しているので、虚部に注目することになります。

本記事の最初のモデルでは\(cos\)で仮定していましたので、実部に注目して、一般解を求めることになります。)

このように、複素数を用いて特殊解を求めると、2パターンの解を表すことができます。

1粒で2度おいしい、っていう解ですね。

一般解を求める

この図の一般解は、強制振動の周期的外力が\(Fsinωt\)の場合なので、\(Fcosωt\)の場合を考えましょう。

同次方程式の一般解は、単振動の一般解となりますので、

$$x=Csin(ω_0t+φ)$$

となります。

非同次微分方程式の特殊解は、

$$z=\frac{1}{ω_0^2-ω^2}\frac{F}{m}(cosωt+isinωt)$$

でしたので、この実部に着目すれば、周期的外力が\(Fcosωt\)の場合の特殊解が求まることになります。

ということで特殊解は下記のようになりますね。

$$x=\frac{1}{ω_0^2-ω^2}\frac{F}{m}cosωt$$

以上より、一般解は、単振動の一般解と上記特殊解の和になりますので、

$$x=Csin(ω_0t+φ)+\frac{1}{ω_0^2-ω^2}\frac{F}{m}cosωt$$

このように求まります。

まとめ

今回は複素数を用いて強制振動の特殊解を求めました。

複素数の解を求めると、実部と虚部が周期的外力\(Fcosωt\)と\(Fsinωt\)の時の解をそれぞれ示します。

どちらを採用するかは、周期的外力によって選んでしまえばよいわけですね。

このように複素数を用いると、1粒で2度おいしい感じになるわけです。

複素数を使いこなして、是非このメリットを感じていきましょう。

参考文献

  • 振動工学の基礎:岩壺卓三、松久寛、森北出版株式会社

初心者向けの振動工学の教科書・参考書をこちらで紹介していますので、参考にしていただければと思います。

次の記事 → 振動・波動の基礎④-変位加振・地動加振・調和地動について 強制振動との違いも解説

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