振動・波動の複素解法① 古典的な調和振動子、単振動

大学物理 振動工学

振動・波動の複素解法 ①古典的な調和振動子の運動方程式

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なんで複素数を使って振動の運動方程式を解くの?

苦手君
デルタ先生

複素数を使うのは、計算が楽になるからなんだ。そもそも複素数も三角関数とよく似た部分があるので、まずは複素数の扱い方を、簡単な例で理解してみようね。

本記事では複素数を使った、運動方程式の解法について説明します。

まずは一番簡単な調和振動子で、その扱い方に慣れていきましょう。

そもそも調和振動や単振動って何?という方は過去の記事を参考にしてくださいね。

本記事をおススメする人

  • 複素数を使った解法が理解できていない人
  • 物理を勉強していて興味がある人、仕事で振動の知識を使う人

動画でも解説していますので参考にしてください。

調和振動子の復習

モデルと運動方程式

下記の図のような状態が調和振動子(単振動)のですね。

※物体と床の摩擦などは無視しています

$$F=k×x$$

$$F = 力、k = バネ定数、x = バネの縮み量、もしくはバネの伸び量$$

運動方程式は

$$m\ddot{x}=-kx$$

この微分方程式を解くと、変位の式は、

$$x = Asin(ωt+Φ)$$

$$x = 物体の位置、A = 振幅、ω = 角振動数、Φ = 初期位相$$

結論として三角関数で示される、ということです。

複素数を用いた解法

では、複素数を使った解法に移ります。

単振動の運動方程式は、線形微分方程式であり、解き方として、特殊解を\(x=Ae^{λt}\)と置くパターンで解きます。

ここで、Aは実数ではなく、複素数もOKである複素解であることに注意してください。

このように置くと、運動方程式は、

$$mAλ^2e^{λt}=-kAe^{λt}$$

\(Ae^λt\)を両辺から消去して、整理すると、

$$mλ^2+k=0$$

ここで両辺\(m\)で割って、\(ω=\sqrt{\frac{k}{m}}\)と置くと、

$$λ^2+ω^2=0$$

この式を特性方程式と呼びます。

さて、この特性方程式を満たすようなλは、どのような値になるでしょうか?

2乗して負の値にならなければいけませんので、複素数\(i\)を使用する必要があり、\(i\)を用いて解を表すと、

$$λ=±iω$$

λは+と-で2つ存在します。

それぞれ特殊解\(x=Ae^{λt}\)に代入すると、

$$x_1=A_1e^{iωt}、x_2=A_2e^{-iωt}$$

線形微分方程式の一般解は、これら特殊解の線形結合で表されるので、一般解は、

$$x=A_1e^{iωt}+A_2e^{-iωt}・・・①$$

となります。

三角関数への変形

一般解は求まりましたが、これは複素数を含むので、複素解と呼ばれます。

よく見る一般解の形にするために、オイラーの公式を使って三角関数へ変形します。

オイラーの公式は下記です。

$$e^{iθ}= cosθ+isinθ$$

この公式を用いると、一般解は、

$$x=A_1(cosωt+isinωt)+A_2(cosωt-isinωt)$$

実部と虚部で分けて整理しますと、

$$x=(A_1+A_2)cosωt+i(A_1-A_2)sinωt$$
 

\(A_1\)と\(A_2\)は複素数なので、\(A_1=a_1+ib_1、A_2=a_2+ib_2\)とすると、

$$x=(a_1+a_2)cosωt-(b_1-b_2)sinωt+i\{(a_1-a_2)cosωt+(b_1+b_2)sinωt)\}$$

ここから、振動の状態を示す一般解を表すには、

  1. 実部、もしくは虚部の片方に注目する
  2. 実数になるように\(A_1、A_2\)を設定する

それではそれぞれの解法について解説しますね。

実部、虚部の片方に注目する

$$x=(a_1+a_2)cosωt-(b_1-b_2)sinωt+i\{(a_1-a_2)cosωt+(b_1+b_2)sinωt)\}$$

この式の実部、虚部の計算を行います。

まず実部を計算すると、

$$x=(a_1+a_2)cosωt-(b_1-b_2)sinωt$$

係数を下記のように置きます。

$$B_1=a_1+a_2、B_2=b_1-b_2$$

実部は下記のようになって、

$$x=B_1cosωt-B_2sinωt$$

三角関数の合成を行うと、

$$x=\sqrt{B_1^2+B_2^2}sin(ωt+φ_B)$$

ルートを\(B_0\)とおいて、

$$x=B_0sin(ωt+φ_B)$$

このように、単振動の一般解が導出されます。

一方、虚部も同様で、

$$x=(a_1-a_2)cosωt+(b_1+b_2)sinωt$$

係数を下記のように置きます。

$$C_1=a_1-a_2、C_2=b_1+b_2$$

実部は下記のようになって、

$$x=C_1cosωt+C_2sinωt$$

三角関数の合成を行うと、

$$x=\sqrt{C_1^2+C_2^2}sin(ωt+φ_C)$$

ルートを\(C_0\)とおいて、

$$x=C_0sin(ωt+φ_C)$$

こちらも単振動の一般解の形になりますね。

実数になるように$A_1,A_2$を決める

$$x=(A_1+A_2)cosωt+i(A_1-A_2)sinωt$$

この式の係数\(A_1+A_2\)と\(i(A_1-A_2)\)をそれぞれ\(C、D\)と置き、\(C、D\)が実数になるように\(A_1\)と\(A_2\)を設定します。

つまり

$$x=Ccosωt+Dsinωt$$
$$C=A_1+A_2、D=i(A_1-A_2)$$

\(A_1\)と\(A_2\)は複素数なので、\(A_1=a_1+ib_1、A_2=a_2+ib_2\)とすると

$$A_1+A_2=a_1+ib_1+a_2+ib_2=a_1+a_2+i(b_1+b_2)・・・②$$
$$i(A_1-A_2)=ia_1-b_1-ia_2+b_2=i(a_1-a_2)-b_1+b_2・・・③$$

②、③が実数になる条件は、\(b_1=-b_2\)、\(a_1=a_2\)となり、\(A_1\)と\(A_2\)が複素共役の場合、\(C、D\)は実数になりますね。

あとは\(x=Ccosωt+Dsinωt\)に対して、三角関数の合成公式を使用すると、

$$x=Xsin(ωt+Φ)$$

となり、複素数を用いても、三角関数の形の一般解となります。

なぜ複素数解法か?

いや、絶対に三角関数で解いた方が楽ですよ。

苦手君
デルタ先生

まぁ単振動の場合は三角関数で解いた方がスマートかもしれないね。でも減衰があったり、強制振動とか外力がある場合、複素数を使った方が、計算が楽になることが多いんだ。

今回は、単振動の式を無理やり複素数を用いて解いたので、少し複雑に感じたかもしれません。

しかし、 減衰があったり、強制振動の場合は複素数を用いた方が計算が少なくなりますので、複素数を用いる場合も多いです。

最終的に解が求まればよいので、三角関数でゴリゴリ計算できる方は不要かもしれませんが、計算ミスを嫌う方や、計算量を減らしたい方は便利な道具だと思って、複素数もマスターしておきましょう。

複素数の実部をとるイメージ

最後に、複素数の実部をとることで、振動の波形になることイメージしましょう。

下記のグラフはオイラーの公式で\(e^{iωt}=cosωt+isinωt\)としたときの、複素平面状の軌道と実部の動きを示しています。

横軸が実部(Re)、縦軸が虚部(Im)です。

実部をとると\(cosωt\)で振動しているので、あとは初期位相と振幅次第で調和振動子の動きを再現できますね。

まとめ

本日は、複素数を用いて振動の運動方程式を解く、ということで、最も簡単な例である単振動の複素解法について解説しました。

今回は三角関数だけで解いた方が早いですが、次回以降、減衰を含む振動や強制振動での複素解法を紹介しますので、そこで有用性をしっかり理解していただければと思います。

初心者向けの振動工学の教科書・参考書をこちらで紹介していますので、参考にしていただければと思います。

次の記事 → 振動・波動の複素解法 ②減衰無しの強制振動の運動方程式

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