振動・波動の基礎⑭動吸振器の設計と定点理論

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振動・波動の基礎-⑭動吸振器の設計と定点理論のグラフ

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2自由度の強制振動が、動吸振器やダイナミックダンパーの設計に使われるって聞いたけど、実際はどのように設計するの?

苦手君
デルタ先生

それじゃあ、2自由度のモデルを使って、どのように設計したらいいか考えてみようか。

今回は、2自由度の強制減衰振動のモデルを使って、どのように振動を制御するかを解説します。

ましょう。

本記事をおススメする人

  • 動吸振器、ダイナミックダンパーの設計の勉強をしたい人
  • 物理を勉強していて興味がある人、仕事で振動の知識を使う人

下記の動画で一部解説していますので、参考にしてください。

2自由度のモデル

まず、動吸振器のモデルですが、これまでの質量を\(m_1、m_2\)と呼んできました。

この記事では、土台に直接つながっている質量を 主系主系につながっている質量を 従系と呼びます。

多くの教科書でもこのように主系、従系で読んでいますので、この表記で進めます。

主系に減衰が無い場合

まず、主系に減衰が無い場合を考えます。

このモデルは下記のように書けます。

この運動方程式は、下記のようになります。

$$m_1\ddot{x_1}+c_2\dot{x_1}+(k_1+k_2)x_1-c_2\dot{x_2}-k_2x_2=Fcosωt・・・①$$
$$m_2\ddot{x_2}+c_2\dot{x_2}+k_2x_2-c_2\dot{x_1}-k_2x_1=0・・・②$$
 

詳細の計算は過去の記事を参考にしてください。

2自由度で、減衰が2個ついている運動方程式を、上記の過去記事で解説しております。

このモデルから\(c_1\)を除いた式になります。

減衰のある2自由度の強制振動の変位は、下記のようになります(これも過去記事を参照)。

$$X_1=\frac{\sqrt{(k_2-ω^2m_2)^2+(ωc_2)^2}}{\sqrt{a^2+b^2}}F$$
$$X_2=\frac{\sqrt{k_2^2+(ωc_2)^2}}{\sqrt{a^2+b^2}}F$$
$$Φ_1=tan^{-1}\frac{(-ω^2m_2+k_2)b-ωc_2a}{(-ω^2m_2+k_2)a+ωc_2b}$$
$$Φ_2=tan^{-1}\frac{-k_2b+ωc_2a}{-k_2b-ωc_2a}$$
$$a=(-ω^2m_1+k_1+k_2)(-ω^2m_2+k_2)-k_2^2$$
$$b=ω[(-ω^2(m_1+m_2)+k_1)c_2]$$

応答倍率について

さて、ここで、 応答倍率という概念を導入します。

応答倍率とは、強制振動の状態において、 振動の振幅と同じ静荷重を与えた場合の変位に対し、何倍の振幅になるか、を示したものになります。

強制振動を\(Fcosω\)とすると、静荷重Fを与えた時の変位に対して、どれくらい変位するか、ですので、

静荷重を与えた時の変位を\(X_{st}\)とすると、フックの法則から、

$$F=kX_{st}→X_{st}=\frac{F}{k}$$

強制振動のときの変位を\(X_d\)、応答倍率\(M_d\)は、

$$M_d=\frac{X_d}{X_{st}}$$

となります。

この応答倍率で考えると、式がすっきりして見やすくなることと、無次元化されることで、どんな振幅の加振に対しても成り立つ、という便利さがあります。

で、この応答倍率で考えるのですが、\(m\)とか\(k\)とか\(c\)とか、いろいろ変数変換します。

  • 主系と従系の質量の比:\(μ=\frac{m_2}{m_1}\)
  • 主系の固有振動数:\(Ω_1=\sqrt{\frac{k_1}{m_1}}\)
  • 従系の固有振動数:\(Ω_2=\sqrt{\frac{k_2}{m_2}}\)
  • 主系と従系の固有振動数の比:\(κ=\frac{Ω_2}{Ω_1}\)
  • 減衰比:\(ζ=\frac{c_2}{2m_2Ω_1}\)
  • 外力の振動数と主系の固有振動数の比:\(γ=\frac{ω}{Ω_1}\)

新しい変数がいっぱい出てきて大変ですが、こういう風に変数をおいたらうまくいくんだ、と思ってください。

それぞれは数値解析するときに使うくらいです。

これらを使うと、主系の応答倍率は下記のようになります。

$$M_d=\sqrt{\frac{(κ^2-γ^2)^2+(2ζγ)^2}{[(1-γ^2)(κ^2-γ^2)-μκ^2γ^2]^2+(2ζγ)^2[1-(1+μ)γ^2]^2}}$$

これも、こうなるんだ、で大丈夫です。

定点理論

大事なことは求めた式から、 どのように設計したらよいか、を考えることです。

それでは、まず、減衰比ζを変化させたグラフを見てみましょう。

例によって、簡単のため、質量、バネ定数、外力は全て1として計算しています。

P点、Q点というものを設定しましたが、この点は どんなζでも通っていることがわかりますね。

質量比μと振動数比κを決めると、どんなζでもP点Q点を通る、これは 定点理論と呼ばれます。

ζが小さいとき

次にζが小さいときを見てみましょう。

1次の固有振動のピーク(\(ω≒0.6\))と、2次の固有振動のピーク(\(ω≒1.6\))が大きくなっています。

これは、動吸振器の減衰が小さいと、1次の固有振動の周波数でも、2次の固有振動の周波数でも共振してしまう、ということです。

つまり、 共振を抑えたいのであれば、ある程度の減衰は必要ということですね。

そりゃそうです、ダンパーなんだからダンピング(減衰)がないと意味がないです。

ζが大きいとき

では、ζが大きければ大きいほど良いのか?という話になりそうですが、そうはいきません。

下のζが大きいときのグラフを見てみましょう。

2次の固有振動モードはほとんど無くなるものの、1次の固有振動のピークはしっかり残っています。

薄い緑の\(ζ=0.5\)までは、1次の固有振動のピークは小さくなっていきます。

しかし、薄い緑の\(ζ=0.5\)よりも、黄色の\(ζ=1.5\)などは、\(ζ\)が大きいのにも関わらず、ピークが大きくなってしまっています。

減衰が大きいと、主系と従系が一緒に振動してしまい、1自由度系と同じ振る舞いとなり、1次の固有振動の周波数で 共振してしまうのです。

結論:振動を抑制したいのであれば、最適なζ(動吸振器の減衰\(c_2\))を選ぶこと!

κとμの依存性

最適っていうけど、具体的にはどんなζにしたらいいの?

苦手君
デルタ先生

最適なζの値は、κとμの値も考えた上で決めていかないといけないんだ。

定点理論とκ

では\(m_1\)の変位のκ依存性を見てみましょう。

ζが∞のライン(グラフの点線)が、すべてのκで同じになっていますね。

一方で、ζが0のとき、κが変化すると、周波数応答は変化しますので、P点もQ点も変化します。

κが増加するとPは大きく、Qは小さくなります。

物理的に考えると、κが大きいということは、\(Ω_2\)が\(Ω_1\)より大きくなる、ということですので、

主系に、硬いバネでつながれているダンパー、あるいは軽いダンパーをつけると、κが大きくなります。

硬いバネ、あるいは軽いダンパーだと、主系が1次固有振動で振動しても、従系のダンパーの振動数が違いすぎて、振動をうまく吸収してくれないイメージですね。

定点理論とμ

最後にμの依存性を見てみましょう。

こちらは、ζが∞でも0でも、周波数応答が変化していることがわかりますね。

当然、P点もQ点もμによって変化します。

(μ=0.5、0.3のときのP点が10を超えてしまっていますが・・・グラフの上で変化しています)

ここまでのまとめ

動吸振器を付けた場合の主系の変位について見てきました。

ζが変化しても、定点理論からP点とQ点は変化しませんが、κ、μを変化させると、P点、Q点が動きます。

あとは、どのような周波数特性にしたいか、によって、これら3つのパラメータを選択すればよいわけです。

よくある設計として、μが決まっていて、すべての振動数において、できるだけ主系の振幅を減らしたい場合、を考えてみましょう。

動吸振器の設計の例

証明は省きますが、この場合のκとζを\(κ_{opt}、ζ_{opt}\)、応答倍率の最大値を\(M_{d max}\)とすると、それぞれ、

$$κ_{opt}=\frac{1}{1+μ}$$

$$ζ_{opt}=\frac{1}{2(1+μ)}\sqrt{\frac{3μ}{2(1+μ)}}$$

$$M_{d max}=\sqrt{\frac{2+μ}{μ}}$$

この場合のグラフを書きますと、下記のようになります。

1次、2次の固有振動数である程度の共振が発生してしまいますが、かなりつぶれた波形になっています。

主系の振動をこのように抑制するものが、動吸振器、です。

まとめ

以上、動吸振器について解説しました。

動吸振器をつける質量を主系、動吸振器を従系とモデルでは呼びます。

また、静荷重の変位に対する、振幅の大きさを応答倍率\(M_d\)と呼び、どんな振幅の振動に対しても議論することができます。

動吸振器の減衰に関するζ、主系と従系の固有振動数の比をκ、主系と従系の質量の比をμとして、

これら3つのパラメータで動吸振器を設計します。

設計する際に重要な理論が、定点理論であり、ζが変化してもP点、Q点という2点は必ず通るという理論です。

このことを利用して、ζ、κ、μを設定し、必要な周波数応答の波形を作っていきます

一例として、μが与えられた場合、動吸振器で\(M_{d max}\)を極小値にする設計と、その式を紹介しました。

少し、盛りだくさんでしたが、設計するときは、式の中に値を入れて、どのような周波数応答になるかを見ることになりますので、

どのようにパラメータを変化させていけばよいかをイメージできるように、グラフを頭に入れておきましょう。

参考文献

  • 振動工学の基礎:岩壺卓三、松久寛、森北出版株式会社
  • 機械力学-振動の基礎から制御まで:日高照晃、小田哲、川辺尚志、曽我部雄次、吉田和信、朝倉書店
  • Wikipedia

初心者向けの振動工学の教科書・参考書をこちらで紹介していますので、参考にしていただければと思います。

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