大学物理 流体力学

03-6 ベルヌーイの定理の演習 トリチェリの定理

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トリチェリの定理ってよくわからないんだけど…

苦手君
デルタ先生

ベルヌーイの定理と意味合い的にはよく似ているので、解説するね。

今回はトリチェリの定理について解説します。

トリチェリの定理を使えば、タンクに入っている液体を蛇口ひねって流出させたとき、どれくらいの勢いで出てくるかを表すことができます。

ベルヌーイの定理の考え方を使っていくことになりますので、ベルヌーイの定理がわからない人は下記の記事を参考にしていただければと思います。

トリチェリの定理

図のように、蛇口がついたタンクを考えます。

タンクの断面積を\(A_1\)、蛇口の断面積を\(A_2\)とします。

蛇口をひねって、タンクの中に入った流体を出したときの液面の高さを\(h_1\)、液面の流速を\(v_1\)とし、蛇口からでてくる流体の流量\(Q_v\)、流速\(v_2\)は、下記のように与えられます。

\[Q_v=A_2\sqrt{2gh}\]

\[v_2=\sqrt{2gh}\]

この式を導出していきたいと思います。

トリチェリの定理の導出

さて、冒頭でも述べたとおり、出発点はベルヌーイの定理です。

ベルヌーイの定理は流体力学の力学的エネルギー保存の法則でしたね。

運動エネルギーと位置エネルギーに加えて、圧力エネルギーを考える必要があるのでした。

ベルヌーイの式は重力加速度を\(g\)とすると、

\[\frac{1}{2}ρv^2_1+ρgh+p_1=\frac{1}{2}ρv^2_2+p_2\]

ここで蛇口の高さをゼロとしています。

このベルヌーイの式を変形していくのですが、問題設定から圧力については一定で大気圧\(p_0\)と等しくなります。

これはタンクの液面も蛇口から出てくる流体も大気に触れているためですね。

つまり、\(p_1=p_2=p_0\)となりますので、ベルヌーイの式は

\[\frac{1}{2}ρv^2_1+ρgh=\frac{1}{2}ρv^2_2\]

となります。

次に理想流体の連続の式を考えると、

\[Q_v=A_1v_1=A_2v_2\]

と書けます。変形して、

\[v_1=\frac{A_2}{A_1}v_2\]

となり、この式をベルヌーイの式に代入します。

\[\frac{1}{2}ρ(\frac{A_2}{A_1}v_2)^2+ρgh=\frac{1}{2}ρv^2_2\]

蛇口からの流速\(v_2\)の項をまとめて、

\[\frac{1}{2}ρv^2((\frac{A_2}{A_1})^2-1)=ρgh)\]

となりますね。

流速\(v_2\)を求めると、

\[v_2=\sqrt{\frac{2gh}{(\frac{A_2}{A_1})^2-1}}\]

となります。

ここで、タンクの面積\(A_2\)は蛇口の面積\(A_1\)に比べて十分に大きいとすると、

\[(\frac{A_2}{A_1})^2→0\]

となるので、

\[v_2=\sqrt{2gh}\]

とトリチェリの定理を導くことができました。

流量は流速に断面積をかけてあげればよく、

\[Q=A_2v_2=A_2\sqrt{2gh}\]

となります。

液面の下がる時間の計算

さて、流量がもとまったので、流体が流れ出ることによって液面が下がる時間を計算してみましょう。

流量を\(Q\)とし、タンク内の断面積を\(A_1\)、液面が下がる速度を\(v_1\)とすると

\[Q=A_1v_1=A_1\frac{dz}{dt}\]

この流量が先ほど求めたトリチェリの定理での流量と等しいので

\[A_2\sqrt{2gz}=A_1\frac{dz}{dt}\]

ここで、任意の液面の高さを議論するために、高さは\(z\)に書き換えています。

微分方程式の変数分離形の形に変形して、

\[dt=\frac{A_1}{A_2\sqrt{2gz}}dz\]

と書けますので、この微分方程式を解いていきましょう。

\(z_1\)から\(z_2\)まで液面の高さが変化した時の時間\(t_0\)は

\[t_0=\int^{z_2}_{z_1}\frac{A_1}{A_2\sqrt{2gz}}dz\]

という定積分を計算すればよく、計算すると

\[t_0=\frac{A_1}{A_2}\sqrt{\frac{2}{g}}(\sqrt{z_1}-\sqrt{z_2})\]

となりますね。

斜めのトリチェリの定理

先ほどのタンクを少し傾けてみましょう。

θ傾けたとき、流体は放物線状の軌跡を描いて噴出するのですが、その頂点の高さを求めてみましょう。

ここで、傾けたとしても、連続の式やベルヌーイの式は成立するので、連続の式から

\[A_1v_1=A_2v_2\]

となり、ベルヌーイの式から

\[\frac{1}{2}ρv^2_1+ρgh_1=\frac{1}{2}ρv^2_2\]

が成立します。

なのでこれまで導出してきたトリチェリの定理をそのまま使えて、

\[v_2=\sqrt{2gh}\]

と書けます。

ただし、傾けた影響で速度\(v_2\)の向きがθ傾いた方向になります。

ここまでくれば、あとは高校力学でも習った放物線の運動として取り扱えます。

速度\(v_2\)を\(z\)軸方向に分解し、その速度を\(v_{2z}\)とすると、

\[v_{2z}=v_2sinθ=\sqrt{2gh}sinθ\]

となります。

この\(v_{2z}=0\)となる点が最高到達点になりますので、\(t=0\)の時に出口から流体が\(v_2\)で飛び出てきたと考え、最高到達点に達した時刻\(t\)を求めます。

放出された流体は重力加速度を受けていくので、

\[v_{2z}=\sqrt{2gh}sinθ-gt\]

となり、\(v_{2z}=0\)となったときの時刻は

\[t=\sqrt{\frac{2h}{g}sinθ}\]

と求まります。

次に高さ方向\(z\)の座標を考えると、

\[z=\int^t_0v_{2z}dt=\int^t_0(\sqrt{2gh}sinθ-gt)dt\]

積分を実行すると、

\[z=[\sqrt{2gh}sinθt-\frac{1}{2}gt^2]^t_0=\sqrt{2gh}sinθt-\frac{1}{2}gt^2\]

先ほど求めた\(t=\sqrt{\frac{2h}{g}sinθ}\)を代入すると、

\[z=\sqrt{2gh}sinθ\sqrt{\frac{2h}{g}sinθ}-\frac{1}{2}g(\sqrt{\frac{2h}{g}sinθ})^2=h sin^2θ\]

と最高到達点が求まりました。

まとめ

トリチェリの定理について解説しました。

使わずにベルヌーイの定理から求めることもできますが、トリチェリの定理を使った方が圧倒的に早いので、使いこなせるようにしておきましょう。

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