運動量の法則って曲がった流管でも使えるの?


もちろん使えるよ。ただ発生する力の向きには注意しないといけないね。
今回は運動量の法則の演習問題として、曲がった流管に対して運動量の法則を使っていきます。
まずは基礎編、しっかりと演習問題に取り組んで運動量の法則の使い方をマスターしていきましょう。
曲がった流管

図のような流管を用意して、検査領域を図のように指定します。
この検査領域の流体の運動量変化を考えて、流管へ作用する力を求めようと思います。
流体は理想流体、定常流となっているとします。
運動量を考える時は、微小時間を考え、初期状態から流体が移動した領域との差分を考えるのでした。
差分を取ると、共通の体積部分の運動量はキャンセルされるので、微小時間の間に入り口から入ってきた流体分と、出口から出ていった流体分の運動量を考えれば良いことになりますね。
あれ?でも流速の向きが違うのに大丈夫なの?


鋭い質問だね。運動量はベクトル量なので、成分を分解する必要があるよ。
力を分解
さて、力を\(x\)軸と\(y\)軸方向に分解して、各方向の運動量の法則を考えます。
運動量はベクトル量なので各成分にわけて考える必要があるのですね。
ということで図のように軸を取り、各方向の運動量と力を考えていきましょう。

\(x\)軸方向の運動量と力
まず流体が入ってくる側の運動量は単位時間の変化を考えると、運動量\(M_{1x}\)は
\[M_{1x}=mv_1=ρQ_{V1}v_1\]
となります。ここで、流体の密度はρ、体積流量を\(Q_{V1}\)としており、\(y\)方向の速度がゼロなので、運動量の\(y\)成分はゼロになります。
出ていく側も同様なのですが、こちらは軸の方向に分解したものをそれぞれ考える必要があります。
\(x\)軸方向の運動量\(M_{2x}\)は、出口の部分と\(x\)軸のなす角をθとして、
\[M_{2x}=ρQ_{V2}v_2cosθ\]
となります。先ほどと同様、流管から出ていく流量を\(Q_{V2}\)としています。
運動量がわかったので、\(x\)方向の力は差分を取って
\[F_x=M_{2x}-M_{1x}=ρQ_{V2}v_2cosθ-ρQ_{V1}v_1\]
となります。
\(y\)軸方向の運動量と力
さて、\(x\)方向の力がわかったので、次に\(y\)方向の運動量と力を求めたいと思います。
入り口側の運動量は先ほど示した通り、\(y\)方向の速度がゼロなのでゼロとなります。
出口側の運動量は、
\[M_{2y}=ρQ_{V2}v_2sinθ\]
となりますので、\(y\)方向の力\(F_y\)は
\[F_y=ρQ_{V2}v_2sinθ\]
表面力、反力を考える

運動量の法則から検査領域にかかっている全体の力はわかりましたので、表面力、反力にわけて考えていきましょう。
表面力\(f_s\)は流体による圧力となりますので、入り口側の面積と圧力を\(A_1、p_1\)、出口側の面積と圧力を\(A_2、p_2\)としますと、表面力の\(x\)方向成分\(f_{sx}\)と\(y\)方向成分\(f_{sy}\)は
\[f_{sx}=A_1p_1-A_2cosθp_2\]
\[f_{sy}=-A_2sinθp_2\]
となります。
圧力による力を分解する時は、面積の成分を分解し、圧力部分は分解しないように気をつけましょう。
間違っても面積と圧力の両方に\(sin\)などをかけないように…
あとは反力\(f\)については、\(F=f_s+f\)から求めればよく、反力の各成分を\(f_x、f_y\)とすると、
\[f_x=ρQ_{V2}v_2cosθ-ρQ_{V1}v_1-A_1p_1+A_2cosθp_2\]
\[f_y=ρQ_{V2}v_2sinθ+A_2sinθp_2\]
と求めることができます。
反力の絶対値は
\[|f|=\sqrt{f_x^2+f_y^2}\]
となり、その角度は
\[θ=tan^{-1}\left(\frac{f_y}{f_x}\right)\]
と求まります。
流管に作用する力は作用反作用の法則から、この反力の符号が逆になったものになります。
まとめ

曲がった流管についての演習問題を取り組みました。
各成分に分解して考えていくことが大切になりますので、しっかりと自分の手を動かして理解していただければと思います。