状態量の中の温度ってどういうイメージを持てば良いの?
温度は気体の粒子の速度を表すんだ。前回の圧力のイメージを用いて説明するね。
今回は熱力学の温度について解説します。
温度も圧力と同様、気体の分子運動論的に考えることができ、結論としては、『温度は気体粒子の速度に相当』します。
前回の記事で、圧力を気体の分子運動論的に考えた内容を解説していますので、ぜひそちらも参考にしていただければと思います。
動画でも解説していますので、参考にしていただければと思います。
前回の復習(気体の分子運動論)
熱力学ではたくさんの気体粒子を系として一括りで見る学問でした。
その系の状態を表すのが状態量と呼ばれるものですが、具体的には下記に示すように、圧力、体積、温度、内部エネルギーなどがあるんでしたね。
その中でも前回は圧力を期待の分子運動論でみた時に、圧力\(P\)は下記のように表すことができることを示しました。
$$P=\frac{Nmv^2}{3V}\tag1$$
\(N\)は気体粒子の数、\(m\)は粒子の質量、\(v\)は粒子の速度、\(V\)は体積です。
圧力というのは気体粒子が壁にどれだけぶつかりますか、というのを示す指標でした。
圧力の式を変形して、温度を考える
さて、この圧力の式を変形していこうと思います。
変形して、左辺を\(PV\)の形にします。
$$PV=\frac{1}{3}Nmv^2\tag2$$
ここで、熱力学で非常に大事な式を使って比較します。
それは理想気体の状態方程式と呼ばれるもので、下記のような式です。
$$PV=nRT\tag3$$
\(n\)は気体粒子の数(モル数)、\(R\)は気体定数、\(T\)は温度です。
この状態方程式、少し変形することができます。
気体の粒子数を\(N\)(個)とすると、
$$n=\frac{N}{N_A}\tag4$$
\(N_A\)はアボガドロ数で、このように式変形できます。
次に気体定数Rもボルツマン定数\(k_B\)を用いて、
$$k_B=\frac{R}{N_A}\tag5$$
と変形できますので、合わせて状態方程式を変更すると、
$$PV=Nk_BT\tag6$$
と書き表すことができます。
この状態方程式と先ほどの圧力の式を比較して、つなぎ合わせます。
$$\frac{1}{3}Nmv^2=Nk_BT\tag7$$
両辺を\(N\)で割ると
$$\frac{1}{3}mv^2=k_BT\tag8$$
このような式になりますね。
で、ここで重要な視点ですが、この式の左辺、運動エネルギーの式に似ていませんか?
古典力学の運動エネルギーは、物体の質量\(m\)と速度\(v\)を使って、\(\frac{1}{2}mv^2\)と表すことができます。
粒子の運動エネルギーも古典力学的には\(\frac{1}{2}mv^2\)と表すことができるので、運動エネルギーを先ほどの(8)式を使って書き表すと、
$$\frac{1}{2}mv^2=\frac{3}{2}k_BT\tag9$$
と表すことができますね。
系に存在する\(N\)個の粒子の運動エネルギーは
$$\frac{1}{2}Nmv^2=\frac{3}{2}Nk_BT\tag{10}$$
この系に存在する\(N\)個の粒子の運動エネルギーは『内部エネルギー』と呼んでいて、
$$U=\frac{3}{2}Nk_BT\tag{11}$$
と書くことができます。
この式を見てみると、内部エネルギー、すなわち粒子の運動エネルギーが温度で表すことができていますね。
ちなみにこの式が成り立つのは理想気体の単原子分子の場合に限りますので、ご注意を…(理想気体の状態方程式を使っていますので)
温度のイメージとしては下図のようになります。
ここでの温度の単位はK(ケルビン)となっています。
温度がゼロ、絶対零度とよばれる状況では、粒子の運動エネルギーがゼロとなり、粒子が止まっている状態になります。
そこから温度を上昇させ、低温から高温へ上げていくと、気体粒子の運動エネルギーがあがる、つまり速度が上昇し、速く動くようになるわけですね。
まとめ
気体粒子の温度について解説しました。
温度が気体の運動エネルギーを示し、内部エネルギーと紐づいていましたね。
単原子分子の理想気体に限れば、
$$U=\frac{3}{2}Nk_BT\tag{11}$$
と表すことができます。
あとはアニメーションのイメージをしっかりともつようにしましょう。